反対咬合(下顎前突・受け口)1
反対咬合とは?
反対咬合とは上下顎前歯3歯以上の前歯が正常とは反対に咬んでいる状態をいいます。
発現時期としては三歳児前後から反対咬合が診られることが多いのですが、
「顎顔面部の不調和が思春期前にわずかであっても、思春期成長により著明に現れることがある。」
第5版 歯科矯正学
つまり、反対咬合は小学校時代まで何事もなくとも中学・高校生になってから突然、予想できない異常な成長により反対咬合となってしまう事がある不正咬合です。
また「治療において、思春期成長を迎える前までに可能であれば前歯の被害を改善しておくことが一般的である。」
5版 歯科矯正学
つまり、反対咬合(下顎前突・受け口)については早期治療が特に効果が見込める症例であると考えられています。
反対咬合には早期治療が効果的
反対咬合を当医院の症例から説明してみましょう。
反対咬合(下顎前突・受け口)は上下の咬み合わせが通常と逆になるので、筋肉や骨の形がその状態に適応するために通常とは異なる形に変化して将来の顔貌にも影響を与えるため、特に早期の治療が治療効果を発揮する症例と言えます。
下の写真のように咬み合わせの力が弱い幼少期の反対咬合は、咬むための力を主に筋力に頼っているので治療の効果が一目瞭然に確認することができます。
治療期間は1年6ヶ月で、いずれも顎のラインがスッキリしています。
これは、矯正治療により受け口が改善されて筋肉の使い方が通常に戻ったために起こった変化で、大人ではこの変化は起こりません。
次に骨格で比べてみましょう。
同じ患者様の矯正治療終了後の骨格です。
不安定に見えていた咬み合わせが、反対咬合が改善されて安定して咬みあっていることが分かります。
小学校低学年の治療であれば早期治療により反対咬合は容易に改善可能で、骨格の変化を考えてみても反対咬合は早期治療の効果が得られやすい症例と言えます。
反対咬合を放置するとどうなるの?
20歳位まで反対咬合を放置すると、体重と比例して強くなった咬合力を支えるために下顎骨だけでなく頭蓋骨などいろいろな顔の骨格を変化させて受け口の咬み合わせに適応していきます。
骨格の変化は頭の上の方から
①頭蓋骨は形を楕円に変形させます。
②中顔面は凹みます。
③下顎骨は先端部分が厚くなり、三角形になります。
このように、大人の強い咬合力で通常とは逆の咬み合わせで咬むために顔面頭蓋の骨の形を変化させるのです。
大人になってから顎の形などの顔貌を気にされて反対咬合の治療を希望される患者様もおりますが、通常とは逆になった咬み合わせや歯並びを整えることができても、残念ながら変形した骨の形は元に戻せません。
この様な理由から受け口の早期治療には価値があります。