【症例紹介】小児矯正から成人矯正へ ― 抜かずに治した長期経過
今回ご紹介するのは、10歳から始まった小児矯正と、その後の成人矯正(マルチループ(MEAW)×インビザライン)を通して、抜歯をせずに歯並びを整えた患者様の症例です。治療終了後の経過観察まで含めると、実に7年近くにわたる長いお付き合いになりました。

小さいお子さんは、ワイヤーが外れてしまうなど治療の初期段階で大変なこともありますが、それでも素直に治療に向き合ってくれることがほとんどです。この「素直に頑張れる時期」であることが、後の治療全体をスムーズに進める土台にもなります。
■ 第1期:小児矯正(2019年12月〜2021年6月/1年6ヶ月)
治療開始時、患者様は10歳2ヶ月でした。この時期の小児矯正では、単に歯を並べるだけでなく、顎そのものを立体的に広げる誘導を行いました。骨格がまだ成長段階にあるからこそ可能な治療で、平面的な拡大ではなく三次元的に顎の土台を整えることができます。




また、成長期には左右の顎のバランスが崩れている(曲がっている)ケースでも、この時期であれば骨格レベルでの改善が可能です。これが成人になってから同じ問題に対応しようとすると、外科矯正が必要になってしまうことも少なくありません。
この段階では、一度の処置で終わりではなく、定期的な検診を通して顎や歯の成長のタイミングを的確に追いながら、装置の調整や誘導のタイミングを見極めていきました。成長期のお子さんは変化のスピードが速く、時期を逃さず捉えることが土台づくりの精度を左右します。
今回のケースも、この小児矯正の段階で顎を立体的に整え、左右のバランスを整えたことが、後の成人矯正を非抜歯・非外科で進められた大きな理由になっています。

写真で見ると、犬歯がしっかりと生えてきているのがわかります。あごを立体的に広げる/左右のバランスを整える/骨の成長を利用できる ― これが、成長期だからこそできる小児矯正の3つのポイントです。歯を並べるだけでなく、あごの土台を育てる大切な時期であり、将来の負担を大きく減らすことにつながります。
■ 小児期に行う理由 ― 治療面・生活面の両方から
顎の骨格そのものにアプローチできるのは、成長期である子供のうちだけです。この時期を逃さず土台を作っておくことで、将来「抜歯が必要」「外科矯正が必要」と言われるような状態を避けられる可能性が高まります。
加えて、小さいお子さんは装置の調整や通院にも比較的素直に応じてくれる時期でもあります。成長して思春期に差し掛かると、装置に慣れるまでの過程も含めて、本人の協力を得るのが少しずつ難しくなっていきます。治療面でも生活面でも、「素直で骨格が動かしやすい」この時期に土台を作っておくことが、結果的にお子さんにとっても保護者様にとっても負担の少ない治療につながります。

思春期に入ると、お子さんの様子は少しずつ変わってきます。言うことを聞かない場面が増えたり、部活・勉強・友人関係で忙しくなったり、時には反抗期で親御さんとぶつかることも。矯正治療がついつい後回しになりやすいのも、まさにこの時期です。だからこそ、まだ素直に通院できる小児期のうちに土台を作っておくことが大切になります。
■ 第2期:成人矯正(2022年5月〜2024年9月/2年間)
中学・高校期を経て、2022年5月から成人矯正を開始しました。ここではマルチループ(MEAW)とインビザラインを組み合わせた治療を行い、2年間で非抜歯のまま歯列を整えることができました。
小児矯正の段階で顎のスペースとバランスを整えていたことにより、成人矯正では「入りきらない歯を抜いて並べる」のではなく、「もともと用意しておいた土台に歯を収める」治療が可能になりました。これが、他院で抜歯や外科矯正を勧められるようなケースでも、当院で非抜歯の可能性をご提案できる理由のひとつです。




この成人矯正の期間(12歳7ヶ月〜14歳11ヶ月)は、ちょうど中学生の反抗期にあたる年代でもあります。一般的にはこの時期、装置の管理や通院が本人にとって負担になりやすいのですが、今回のケースでは小児矯正の段階でしっかりと土台を作っておいたことで、目立ったトラブルもなく治療がスムーズに進み、アライナーの装着もきちんと続けてもらうことができました。反抗期であっても、土台さえ整っていれば治療は無理なく進められる ― そのことを示す一例でもあります。

治療が楽で短期間、抜歯しなくても歯列が治る(※ケースによっては抜歯が必要になる場合もあります)、将来の負担を軽くできる ― 小児矯正で土台を作っておいたからこそ、この成人矯正もスムーズに、そして非抜歯のまま終えることができました。
■ 保定後の経過観察(2024年9月〜)
治療終了後も、歯並びの安定性を確認するための検診を継続しています。
・2024年9月30日:成人矯正終了
・2025年4月10日:経過観察(終了後約半年) 15歳9ヶ月


・2025年7月18日:リテーナー作成
・2026年7月9日:矯正後2年目の経過観察 16歳9ヶ月


■ 保定後の経過観察で見ていること
治療が終わった後の経過観察で最も重視しているのは、保定装置(リテーナー)がしっかり使用されているかどうかです。せっかく整えた歯並びも、リテーナーの使用が不十分だと少しずつ後戻りしてしまいます。検診のたびに歯列の状態を確認しながら、装着状況についても丁寧に確認しています。
あわせて、親知らずの状態も経過観察の重要なチェックポイントです。当院では、矯正治療が終了した段階で親知らずの抜歯についてご案内していますが、受験など人生の節目と重なる場合は、抜歯を保留にされる患者様もいらっしゃいます。その場合も、1年後・2年後の定期検診の際に、親知らずが歯列に影響を及ぼしていないかを改めて確認し、必要であれば再度抜歯をご案内しています。
リテーナーの使用状況、親知らずの影響 ― こうした後戻りの要因を一つひとつ丁寧に確認していくことが、治療後もきれいな歯並びを長く維持していただくために欠かせません。
■ まとめ
小児期に顎の成長を活かして立体的にスペースとバランスを整え、成人期にその土台の上で精密な歯列移動を行い、治療後も検診を通して長期的に経過を追っていく ― この一連の流れが、抜歯や外科矯正を避けながら美しい歯並びを実現し、それを維持するための方法です。
「将来抜歯や外科矯正が必要と言われたことがある」という方も、成長期のお子さんであれば早めのご相談で選択肢が広がる可能性があります。

お子さまの矯正は、6番臼歯までが萌えそろう10歳前後が目安です(個人差はあります)。成人矯正は、あごの骨が完成する15歳ぐらいまでに始めるのが最適とされています。歯を抜かないで済む可能性が高まること、そして大人になってから外科的処置が必要な状態になりにくいこと ― この2つが、早めに治療を始める大きなメリットです。
早めの一歩が、将来の負担を減らし、ずっと素敵な笑顔を守ります。
※矯正治療は自由診療であり、歯の移動に伴う痛みや歯根吸収などのリスク・副作用が生じる場合があります。治療期間・費用には個人差があります。詳しくは当院までご相談ください。





